オンライン手続きとe-Japan戦略

日本政府は、2001年にe-Japan戦略構想なるものが発表され、5年以内に世界最先端のIT国家になることを目指したようです。それで今どのような状況なのか。
ここでは行政手続き自体のオンライン化について取り上げてみたい。確定申告の季節だが、私もすでにほぼ家族の分を含めて終了しました。e-taxで申告するわけだが、平成23年度でオンラインで申請している人は47%です。あれだけ宣伝していて、パソコンも普及しているのに、です。行政書士会の資料にe-taxのチラシが入っていて、なんでかなと思ったら、行政書士用の電子証明書でも確定申告できるから、是非してくださいということらしい。つまり、行政書士で仕事で電子証明書を持っている人でも、自分の確定申告は紙でやっているケースがあるということでしょう。
ネックになっているのは、この個人の電子証明書の普及で、最初に手数料が合計1000円程度かかる上に、電子証明書は3年毎に更新しなければならず、転居すれば、失効するといった点が面倒がられているのでしょうか。確かに1回のみ3000円控除があっても、普通の人は年1回しか使わないわけですからね。
更にひどいのは、登記手続きで、オンライン申請率は30%程度です。登記手続きは、オンライン申請開始当初はもっとひどくて、ほとんど使われない状態だった(社会保険・労働保険関係はいまでも数%のようです)。それは、すべての書類をネットで送ることを原則にしてしまったから。実際には電子化されていない書類はたくさんあり、それが添付情報となる場合は、必然的に書面申請になっていた。結局、運用を現実に合わせる形で、見直され、添付書類の郵送による別送が認められるようになり(通称、半ライン申請と呼ばれる)、ようやく3割台になったということである。登記の場合は、ほとんどが専門家である司法書士が行なっているが、それでも3割なのである。オンライン申請が始まって間もないころ、自分の登記を添付書類も含めてオンラインで申請してみて、随分驚かれたことがある。
結局もっともらしい掛け声とは、裏腹に起こったことは、建設土木産業のような利権構造が、IT産業にも生まれたのだと言えなくもない。なんでもかんでもIT化すればいいとばかりに、システムを導入し、結局は使われないといった例も報じられたところである。利便性の向上のためだったはずが、本末転倒になっている。誰が一番得をしたのか、言いたくなる。本当に国民のためのシステムを考えていただきたいものだ。