OSS(自動車保有関係手続きのワンストップサービス)は誰のためのものか?

OSS

周知のように、自動車を購入する場合、他の動産とは違い「登録」や「車庫証明」といった手続きが必要になる。そういう意味では不動産に近いわけで、不動産の登記に当たるものが自動車の登録になる。つまりナンバープレートを付けないといけないということだ。
自動車も高額な商品であるが、不動産に比べれば安く、不動産より取引量もはるかに多い。(筆者は現在は司法書士です)

自動車登録を行政書士以外が行うのは原則違法です

不動産登記を専門家に依頼するという場合、司法書士に頼むことは知られていると思うが、この自動車の登録は、行政書士の仕事である。しかも行政書士以外が報酬を得てこの手続をするのは原則として違法である。
こう言うと、車を購入する際、自動車登録などの手続きは自動車販売店(ディーラー)が行うのが通例で、買う方もそれが当たり前と思っているのではないか、と言われそうである。
ごもっともである。しかし、実際は、販売店から委託を受けた自販連登録代行センターというところにある行政書士事務所が書類の作成を行っているのだ。また、書類の作成は無料で行い、手続きの代行料をとるといった脱法行為的な手法も用いられているらしい。
いずれにせよ、自動車登録は行政書士の仕事であり、この仕事を自らの収入源にしたい自動車販売店側と行政書士とが長年にわたって闘ってきた分野なのである。

自動車登録手続きや車庫証明も電子化がすすんでいます

一方で、自動車関係手続きに関しても、電子化が進められ、OSS(自動車保有関係手続きのワンストップサービス)が稼働を開始している。その導入過程で、自動車業界側の働きかけにより、紙の書類ではなく、この電子申請のデータに関しては、行政書士でなくとも、自販連(一般社団法人日本自動車販売協会連合会)もできるという改正がなされ、自動車登録という行政書士の独占業務の一角が食い破られることとなった。弁護士業界からも攻撃を受ける行政書士業界だが、自販連との攻防においては、その立場は全く正反対になる。
不動産登記に比べれば、自動車登録は簡単であるともいえ、規制緩和は世の流れといえるかもしれない。しかしながら、自らの収入源として確保したい自動車業界が行政書士から業務を奪うようなことは本来の規制緩和といえるのだろうか?たしかに行政書士も既得権益にしがみついていればよいというものではない。
ユーザーの視点にたって考えないと正しい解決には至らないということだ。

何のための手続きの電子化か?自販連のためのものではないはずだ。ユーザーの利便性の向上のためのものではなかったのか。聞くところによると、ユーザーが自分で登録手続きを行いたいと申し出ても、ディーラーに拒否される例もかなりあるという。かく言う私も今の車の購入の際、OSSで申請したいといったところ、いろんな理屈をつけて断られた経験がある。

結論としては、ユーザーが自分で簡単に登録手続きができるのであれば、多くのユーザーがそれを選択するはずで、OSSをそのようなものにしていかなければならないということだ。現状のOSSは自販連のためのOSSでしかない。実際、電子化されても、手数料は安くなっていないのである。
ユーザーの利害、ユーザーの視点を第一に当事務所も、OSSをより使えるシステムにするべく、微力ながら奮闘したい。

車を買うなら「手続きは自分でパソコンからします」と言ってみよう

e-taxを使っている人なら電子証明書を持っているわけだから、個人でもOSSを使用できる。もし自動車を購入するなら「登録はOSSで自分でやります」と言ってみよう。