憲法を争点にする前に憲法を勉強しよう

憲法 第五版
先日の国会で「憲法96条改正を政府が言うのは憲法尊重擁護義務を定めた憲法99条に反するのではないか」との問に、安倍首相は「それは的外れ、確かに憲法には国家権力を縛るという側面があるが、基本的人権が定着した今、それだけではない」という趣旨の答弁をした。
これは聞き捨てならない。「国家権力を縛る」というのは憲法の本質であって、一側面では決してない。また、基本的人権が定着した、などと何を持って言えるのだろうか?

憲法改正の限界の有無という論点があり、通説は憲法改正には限界があるという限界説である。これは民主主義の基本要素を破壊するような改正は行えないというものだが、現在言われている「憲法改正」にはこうした限界にまで踏み込むのではないかという危うさがある。

「憲法改正」の問題というのは日本の国民にとっては政治課題以前の問題だと考える。賛成か反対かを論じられるほどテーマ自体が全く成熟していない。まず、憲法とは何かという認識自体が全然定着していない。「押し付け」かどうかといったある意味、政治的に「わかりやすい」議論がともすれば先行する。

政治の問題として議論する前に、まず「法律」の問題としてしっかり学習すべきである。政治的な立場とは一応独立に、「一種の自律的な論理の体系として法解釈学が存在している」「「法的」であるということは、完全に「政治的」であることに対する重要なチェックを含んでいる」(内田貴『民法Ⅰ』p.244)のだから。