会社法の勉強の仕方

全くの法律初学者が、最初につまづきやすいのは、民法だが、これは民法の体系に由来している部分が多分にあり、これは法律自体の壁であるので、法律を学ぼうというものなら、越えなければどうしようもない。しかし、商法、会社法というのは、民法なんかがある程度わかってきても、次に立ちはだかる壁となる。
しかし、この壁は実は法律自体の壁ではない。会社法を法律の視点だけで捉えて、とっつきにくいということが結構あるのではないか。
そういう人にお勧めなのが、「加藤晋介の商法入門」だ。この本も例によって、入門らしからぬ、およそ他の入門書には書いていないようなことがたくさん書いてある。
商法・会社法の世界は、法律の論理だけではなく経済の論理と交錯するところに存在すると解き、その経済目的、経済合理性に着目すれば、商法・会社法の世界が見えてくるという。
そして従来の商法の考え方は、「資本と経営の分離」であり鈴木武雄のアングロサクソン的な考え方に由来するという。それとは別に労働者代表が監査役会に入るようなドイツ型の会社法もあり、実は労働法と会社法とは、紙一重の差しかないという。
それはともかく、日本においてはアングロサクソン型の会社法が採用されたため、法的にはいわゆる株式会社を中心とした法制が続いてきたわけです。それは「株式」と「有限責任」という制度により利息の付かない事業資金を合法的に集める技術です。

しかし、現実にそのような会社がどれくらいあるでしょう?外部に株式を発行して資金を集め、経営のプロとしての取締役会が会社の方針を決めているような会社が。中小企業にとって、資金調達とは通常銀行等金融機関からの調達です。現実と法律の理念が大きく離れていたのです。
そういうこともあり、平成18年旧商法が改正され会社法となりました。その結果、会社法では取締役会を設置しないタイプを原則形態として、圧倒的多数を占める零細企業の実態に法律を合わせました。それとともに、経済のグローバル化に対応した委員会設置会社や組織再編の規定を整備しました。

このように会社法は法律と経済の両面から理解されなければなりません。事業をやりたいから会社を作るということになっても、その会社は実にいろいろな設計ができるのです。ワンパターン化した形でルーチンワークで会社設立をやっても意味がありません。
加藤晋介の商法入門