弁護士なしで本人で裁判してるのはとても多いぞ。

saiban追記:最新のデータをもとに関連記事を業務内容紹介として書いております。
こちらも御参照下さい→裁判支援業務紹介
弁護士なし
で裁判する人の支援サイトを開設しました。
その名も「自分で裁判ドットコム

司法統計というものがあり、最新では平成23年の統計が発表されている。
その数字を見ていて、弁護士などの専門家が代理しないいわゆる本人訴訟が、思ったより多いのに驚いた。また、訴訟の件数自体は増える傾向にある。
世間では、弁護士の就職難がニュースになるほどなのに、日々裁判所では弁護士なしでたくさんの裁判が行われているのだ。本エントリーでは、この現状を自分なりに説明してみたい。

裁判のやり方についての記事がバズった

以前にも取り上げた、WP-Dさんのバズった記事「売掛金回収!少額訴訟してみたよ。」,この記事が多くのアクセスを集め反響を呼んだのは,フリーの制作者なんかが、代金の回収で頭を悩ませているケースがしばしばあるからだろう。そして契約の基本的なことや、裁判制度などについて初歩的なことも共有されていない様子がよく伺える。

裁判は勝てばそれいいというものではない

ただ、この記事でも、頑張って自分で訴訟をやって、しかもちゃんと勝訴までしたものの、結局代金はまともに回収できなかったというおちがついているように、裁判は万能じゃない。
いざとなったら裁判だ、と思っている人も多いかもしれないが、そんなことはないのだ。こんなことでは、国民の裁判制度に対する信頼が揺らいでいくと思うが、現状はそうなのだ。

民事保全手続きがあらかじめ必要だがそれが多分簡単じゃない

裁判に勝っても、どうしてお金が回収できないかといえば、簡単な話で相手にカネがないか、またはカネをうまい具合に隠されたからだ。
これを防ぐには、裁判の前に仮差押え等の民事保全手続きをとる必要がある。上記記事のように少額訴訟を起こすだけであれば、素人でも裁判所に教えてもらいながらできるわけだが、民事保全手続きまでしようとする敷居は高いと思われる。手続き面もあるが、仮に差し押さえるべき資産を調査、探索するのに、時間とエネルギーがかなりいるであろう。書類の書き方は裁判所に教えてもらえても、こんなことは手伝ってはくれない。

専門家は金儲けだけで人助けはする気がないのか?

では、専門家に依頼すればいいのか。確かに弁護士ないし司法書士であれば、こうした仕事ができる。
ただここでも問題がある。弁護士ないし司法書士が、そもそも仕事を受けてくれるかという問題だ。というのは、こうした不払いの案件というのは、額自体が小さく割にあわないと判断されるからだ。
依頼する側からしても,勝訴して得られる金額より費用のほうが高かったりしたら,何の意味もない。
かくして本人訴訟の割合がかなり高いというのが、私の見立てだ。弁護士や司法書士が、本気で人助けをする気があるのなら、いくらでも裁判の案件はあるのだ。実入りの少ない仕事は避けて、仕事がない、過払いバブルは終わった、などと嘆いているようにみえるのだが。
とはいえ,専門家にも生活があるわけでボランティアでできるものでもない。
これは実は昔から議論されている悩ましい問題であり,その解決のために「司法制度改革」もあったのだが,大きな成果をあげるに至っていない。

数字を見れば案件はたくさんあるようにみえるのだが

具体的な数字を見てみよう。まずは簡易裁判所での通常の訴訟の統計だ。

簡易裁判所通常訴訟司法統計 原告被告双方が本人の場合で、半分を超えている。どちらかが本人というのは、9割以上だ。被告側が本人が圧倒的なのは、過払い金訴訟で簡裁の場合、被告会社の社員でも代理人になれるという事情からだろうか。
次は、少額訴訟を見てみよう。
少額訴訟司法統計
絶対的な件数がとても少ない。本人訴訟の比率は、さすがに簡裁通常訴訟と比べても圧倒的に高い。ただし、少額訴訟であっても、相手が異議を申し立てれば通常訴訟に移行できる。少額訴訟の場合、訴額の上限が60万円なので、60万円以下の仕事は弁護士や司法書士はほとんどしていないことが伺える。もともと少額訴訟というのは「自分でできる」簡便な手続という狙いもあったはずである,しかし蓋を開けてみれば,それまで簡裁通常訴訟で行われていた60万円以下の訴訟が少額訴訟に移行するような形にはなっていないようだ。
さらに、地方裁判所の第一審の統計と各手続きの比率をを見てみよう。
地方裁判所の第一審司法統計簡易手続き等の内訳さすがに、どちらかに弁護士がつくものは4分の3程度ある。ただ双方弁護士は4分の1を超えたくらいであり、双方本人というのも4分1近くあるのは驚きだ。地裁は訴額の制限はないので、高額の事件もあるかもしれない。なのにこんなに本人訴訟が多いのはどういうわけか。弁護士にはまだまだ営業努力の余地があるといえるのだろうか。私は現場のことはわからないので、わかる方是非教えてほしい。
web制作者やIT関連業者であれば、ネットで基本的な手続きができる支払督促のほうが手間なくできるかもしれない(ただし,本人確認のため電子証明書が必要である)。もちろんこれも相手側が異議をだせば通常訴訟に移行してしまうことは同じだが。また、相手側が任意に支払わなければ強制執行が必要になる点も同じだ。

できれば裁判なんかしないほうがいいというのが結論だ

結局は、上記記事でも最後にまとめてあるけど、備えあれば憂いなし、日ごろのリスクマネジメントが一番肝心ということになる。
もし契約書とかちゃんと用意していない、文面などもどうしたらよいかわからない、適当な文面にしているといった人は、まずそこからきっちりした方がいいです。
万が一、不払いが起こったら、まずは内容証明郵便で督促です。これで解決できることを祈りますが、できなければ今まで見てきたような裁判制度に頼るしかないです。その場合、裁判を起こすこと自体より、勝った時、相手のどこからカネを回収するかあらかじめ調査しておくことが肝心だということです。法人と契約しているのであれば、不動産や動産を差し押さえようと思っても、その法人のものでなければなりません。不動産の差押えまで考えるのは大層なことですが、今ではネットから所有者の調査は安い手数料で簡単にできます。